このページでは、私たちが猫カフェを開業するに至った想いを綴ります。6年分の想いが溢れすぎた文章になっていますので、とてもとても長いです。もしご興味ありましたら、ご覧ください。
================
たくさんの猫に囲まれながら、多くの「人と猫」や「人と人」の繋がりを育める場を提供したいー。まだ「猫ブーム」という言葉がなかった、2013年頃にそんな夢を持ちました。
それから6年もの間、あらゆるテナントを探し回りましたが、気に入った場所がありませんでした。どうしても、猫たちがいる部屋に鍵をかけ、自分だけ“帰宅”するということが、イメージできなかったのです。
その間、悩みながらも猫に関わる勉強を続け、なんと仕事までもペット関係のものに変えました。
「最も好きなものを仕事にすると、嫌いになる」ということを何度となく聞いたことがありますが、私の場合はもっと好きになり、猫カフェを開きたいという夢は膨らむばかり。
そして、猫たちが自然に過ごし、限りなくストレスなく生活ができるよう考えに考えた結果、「ここで猫カフェをやろう。」と、約35年、私たち家族が過ごした自宅を改装することにしたのです。
昨今、「(いつか)猫を飼いたい!」という声を、多く聞くようになりました。
猫好きにとっては、とても嬉しいことです。
でも、「どんな猫を、どこから、どんな人から迎えたいですか?」という質問に、はじめから明確なイメージを持ち、お答えできる方はどれだけいるでしょうか?
私は幼少の頃、ラグドールという名前も容姿もとても美しい猫に見惚れ、いつの日か「ラグドールを飼う!」ということを夢に持ち、大人になりました。
ところが、実際に初めて迎えた猫は、まさに、この「猫の屋おでん」の裏庭で朝までニャーニャーと泣き続けていた、捨て猫でした。
その猫は、現在19歳。
「猫の屋おでん」の3Fでのんびり過ごしています。
2019年11月26日(火)早朝、20歳を目前に虹の橋を渡りました。
話は変わりますが、現在日本で年間約35,000匹もの猫が殺処分されていることをご存知でしょうか?
非常にショッキングな数字です。
この殺処分をゼロにしようと、ボランティアさんや、理解ある地域、獣医師、自治体、企業など様々な連携によって、少しずつ、そして着実にその目標の実現に向かって歩みを進めています。
TNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻す)をはじめ、ミルクボランティアさんは寝る時間も削って子猫を育て、毎週のようにどこかで譲渡会が開かれ、全国に保護猫カフェも数多く存在します。
これまで、これらに関わる多くの方に出会ってきましたが、みなさん一様に保護猫のこととなると、自分のことはそっちのけ。時間も体もお金までもすべて保護猫に捧げるというような方がほとんどで、本当に頭が下がる思いです。
この、「殺処分をゼロにしたい」という気持ちは私も同じで、できる範囲ではありますが、保護猫譲渡会をサポートしたり、時にはTNRの現場に立ち会わせていただいたり、飼育施設に行ったり、全国の保護猫カフェに足を運んだりもしています(行くことで支援になります!)。
ただ、保護猫に関わる生活をしていると、どうしても「保護猫を迎えるべき!」「どうして保護猫を迎えないの?」「なぜ純血猫なの?」という思いが頭の中をぐるぐるぐるぐる駆け巡ってしまうのも事実です。
ところが、ふっと冷静になって周りを見渡すと、保護猫の存在すら知らない人がまだまだ非常に多いことに驚きます。そして、いまだにペットショップからしか、ペットを迎えられないと思っている人がとても多いのです。
誤解いただきたくないのは、ペットショップがいけないという意図はありません。
最近では、アニマルウェルフェアを徹底したペットショップも増えてきましたし、家族のように接してくださるスタッフがいたり、実際に私には大好きなペットショップもあります。
ブリーダーさんに関してもそうです。
日本でブリーダーと聞くと、何だか怪しい職業に聞こえてしまいますよね。
それもそのはず、日本でニュースになるのは、決まって“悪徳ブリーダー”のことばかりだからです。(海外では、素晴らしい仕事ねと言われるのに!)
確かに、そういう心ない方もいるでしょう。
私も知っています。
でも、正しく血統を守り、安全に繁殖できるよう血のにじむような努力をされ、悲しいことが起きた時には、まるで我が子を亡くしたかのように心を痛めて落ち込み、また勉強されては立ち上がる・・・24時間不眠不休、1日に何件もの動物病院に駆け込み、何時間でも飼い主さんの相談に乗る・・・そんな、多くの家族に笑顔と幸せを届けるような素晴らしいブリーダーさんも多く知っています。
人と猫との繋がりの域を超えた、人と人のつながりがそこにはあります。
保護猫の話に戻すと、殺処分ゼロを目指す!という想いに反して、日々感じるのは、多少なりともある「ハードルの高さ」です。
ある同僚は、ずっと保護犬を家族に迎えたくて愛護団体を何度も何件も訪問しましたが、
「男性の一人暮らし」ということで、全て門前払いをくらい、結局ペットショップで迎えました。
別の女性は、電話口で「未婚」「仕事による不在時間が多い」という条件のみを聞きだされ、猫の「ね」の字も出されずに電話を切られました。(数年後、その団体の方と再会した際、「なぜペットショップから迎えたのか」と頭ごなしに責められたそうです。)
でも、これもある意味仕方のないことなのです。
一度、「捨てられた命」「殺処分されかかった命」、だからこそ絶対に幸せになってほしい。
と、強く願う想いがそこにはあるのです。
「保護猫は無料でもらえる」という誤った情報がまだ根強く、安易に迎えたばかりに、再び捨てられる、戻ってくるといった事も多くあり、その度に保護主さんはもちろん、保護猫の心はとても傷つきます。
そればかりか、安易に手に入れて虐待をする人間もこの世には存在します。
保護猫譲渡会やシェルターの方が、とても厳しい条件を出すのは、決してあなたにいじわるをしたいのではなく、ただただ猫に幸せになってほしいと思うあまりという部分もぜひご理解ください。
一方で、我が家には、保護猫がたくさんいます。
シェルターから迎えた際には、もちろん、ありとあらゆることを聞かれました。
自宅の間取り、年収、仕事内容、子どもの計画・・・ううっ・・・。
ただ、光栄なことに、我が家を選んでいただき、その成猫を迎えることができました。
その子は、5か月で飼い主にもらわれたものの、電気も水道も通っておらず、カーテンは閉め切られ、一筋の光さえささない真っ暗闇の中に閉じ込められていたところをレスキューされた子です。
成長期にご飯をもらえなかったトラウマを克服するのに、多くの時間が必要でした。
(閲覧にご注意ください⇒http://angels2005.org/201404rescue/)
またある時は、成猫を引き取ってくれないかと頼まれ、3歳と6歳の子の2匹を同時に引き取りました。
私たち家族は、この子たちの受け入れについて、幾度となく話し合い、最終的には、性別、年齢、毛の色、毛の長さのどれ一つ聞くことなく、「離したくない仲良しのグループがいれば、3匹までなら受け入れられます。」と回答をしました。
その時、引き取った子たちは、ドロドロのガリガリ。
特に6歳の子がひどく、まだ引き取られたばかりで怯える中、いまにも折れそうな前脚を、謝りながら洗ったことを、鮮明に覚えています。さらに、この子のお腹には、帝王切開を受けた後の「糸」が縫われたまま、抜糸されずに付いたままだったのです。
とにかく栄養を!と太らせていた矢先、今度は3歳の子が子猫を身ごもっていることがわかりました。明け方の不自然な破水で、母体優先の緊急帝王切開をしましたが、子猫を助けることはできませんでした。
私は、この子猫のことを一生忘れることはないでしょう。
(この母猫は、その後、重度の脳の病気があることが判明し、生死の境もさまよい、今も闘病中です。)
さらに別の、5歳で引き取った子は、飼っていたおばあちゃんが認知症になり入院を余儀なくされ、家族親戚探したけれども誰も引き取ってもらえる人がいない、と相談された子でした。
一度心を閉ざしてしまったその子は、目を見て前から触れるまでに3ヵ月、他の猫たちと一緒に暮らすまでさらに2ヵ月かかりました。
さらにさらに別の子は、子猫を迎えたけれど、面倒を見切れなくなり飼えなくなってしまったということで、引き取ることになりました。
さて、ここまでの5匹の“保護猫”の話を聞いて、どんな“保護猫”を思い浮かべましたか?多くの方は、きっとなんとなくのイメージで雑種(日本猫)を思い浮かべたのではないでしょうか?
少なくとも、数年前の私はそう思ったと思います。
実は、みんな純血種なのです。
恥ずかしながら私自身、純血種にも保護猫がいるという認識が数年前までありませんでした。
私は普段、この子達が、元保護猫だったことを積極的には言いません。積極的に言うことだとも思っていません。なぜなら、ペットを飼ううえで最も大切なのは、命を大切にするということであり、保護猫だからとか、雑種だからとか、純血だからとかとという、「垣根」を、私自身全く感じていないからです。うちの子になった以上、少なくとも私にとってはそんなことはどうでもいいことだったのです。
とはいえ、それらは大切な情報ではありますし、保護猫を迎えるということにおいては、少なからずコツがいることですので、必要に応じてお伝えはしていくつもりです。
さて、これらの体験をふまえ、ふと気づいたことは、保護猫・命という切り口で何かを発信する際、純血種を外すことはできないなということでした。
純血種は見た目に特徴的なケースが多いことから、とても愛らしく、流行りに左右されがちです。
一方で、猫種によっては、手入れの手間の多さに驚くことも少なくありません。
また、猫に限らずですが、血統によって想定される身体的なリスクを伴うことも少なからずあります。
こういったことも、猫ブームと共に、純血の保護猫が増えた要因のひとつかもしれません。(補足:純血猫の保護猫が増えた理由の1つに、自然災害があります。阪神淡路大震災や東日本大震災などでは、家屋の倒壊により行き場を失ってしまった、純血の子たちが外の世界での暮らしを余儀なくされたケースもあるのです。)
では、純血種はダメなのでしょうか?
冒頭で申し上げたように、私は幼少の頃ラグドールに惚れました。
この、人の素直な感情は否定できるものでしょうか。
キレイものはキレイ、かわいいものはかわいい、手に入れたい、一緒に暮らしてみたい・・・それって、人に押し付けられるものでも、止められるものでもありません。
実際、私は鼻ぺちゃのエキゾチックショートヘアや、毛のないスフィンクスが大好きです。そして、それらの猫種を大切にする全ての人たちが大好きです。(あれ・・・美しいラグドールはどこへ??笑)
少々脱線してましたが、、、私が日々感じることは、猫を家族に迎えるにあたって、「〇〇するべき、〇〇であるべき」といった感情論ではなく、それよりもっともっと前に大切なのは、「知ること」「知ってもらうこと」だということです。
まずは「猫」を取り巻く様々な状況を知って、実際に「猫」に触れて、「命を大切にしよう」という、ごく当たり前のことをしっかり理解するということに尽きるのだと思います。
猫とそれらを取り巻く様々な状況や社会問題、情報を知ったうえであれば、保護猫を迎えた、ペットショップから迎えた、ブリーダーさんから迎えた、こんな猫種(純血種)を迎えた。これらの、どの考えや判断や選択も、他人から否定されるものではないのではないかと、考えます。
・保護猫って何?どこに行けば会えるの?保護主さんとは合うだろうか?
・純血種って何?ペットショップでしか迎えられない?
・ブリーダーさんってどんな人?怖くない?(怖くないです笑
・保護猫にも純血種はいるの?
・各猫種によって特有の注意すべきこともある?
・シェルターってどんなところ?愛護センターっていつ行ってもいいの?
知れば知るほど、色んな疑問や知りたい!が湧き出てくるものです。
あぁ・・・
猫に関する想いを書きなぐっただけでこんな長さになってしまいました。
収拾がつかなくなる前に(笑)、まとめさせてください。
たくさんの猫に囲まれながら、多くの「人と猫」や「人と人」の繋がりを育み、
猫に関する、あらゆる「垣根」を超える場を提供したいー
「猫の屋おでん」は、小さな施設ではありますが、こんな壮大な想いを抱いているのです。
====追記====
先日、ここまでのストーリーを読んでくださった方から、【それでもなお、保護猫カフェではなく、商業目的のカフェをオープンされたことがとても残念です。】というコメントいただきました。
これに対してお返しした返答を記載しておきます。
※一部わかりやすく補足、誤植の修正を行っています。
【ストーリーを見ていただいてありがとうございます。いろんな意見があることをもちろん承知しております。
まず、私自身が保護猫の譲渡会などをサポートする中で、保護猫のことを知らないが故に、保護猫カフェへ行くことに対しハードルが高いと感じられる方の多さに驚いています。
なぜなら、保護猫カフェの入店料が少し高めに設定されていることが多かったり(理由がある)、今は飼えないからと行くことをためらってしまったり、支援物資の報告が多く、サポート品なしで入店できない(行きづらい)と感じる方もいらっしゃるからです。
ですので、なるべくハードルをさげ、まずは猫と触れ合ってもらい、その中で保護猫カフェとはこういう目的で運営していて、行くことで支援になるということも伝えていきたいと思っています。
また、神戸市は全国的に見ても猫カフェ開業の条件が非常に厳しく、神戸そのものに猫カフェ自体が少ないということも、現在猫を飼っていない方からするとなおのこと、一足飛びに保護猫カフェへ行こう!とは思いづらい理由の1つとしてあります。確かに形態は少し異なりますが、駅から少し離れているからこそ取れるスペースで、他にできないことを通じて保護猫カフェをはじめとする様々な啓発に繋げていきたいという考えがあります。
そして、商業目的の点ですが、商業利用にしなければ、どんなサービスもビジネスも継続は不可能です。フードや治療費なども支援を募り続けて回すことは可能かもしれませんが、人間の自己犠牲の上に成り立つ社会貢献は一代で完了してしまいかねません。命の大切さを次の世代までずっと伝え続けていくには、しっかりと自立をして継続していくことが不可欠だと考えます。保護猫カフェでも、自らのカフェでしっかりと稼いで続けていくという所も増えてきました。
とはいえ、正直申しまして、猫カフェは普通利益が出るものではありません。思った以上にあらゆるコストがかかります(基本的に支援などはありませんので)。
その裏付けとして、銀行から融資を許可されるまで2年かかりました。銀行も猫カフェが利益を産むサービスだと思っていないからです。それでも私たちは、どんな選択であっても猫と暮らすということを身近に感じてもらうためのコミュニティを作りたく、このような選択をしました。
また、そもそも「保護猫カフェ」と「そうではない猫カフェ」と、区別をする理由はあるのか?という考えの元、神戸の保護猫団体のみなさまとも協議を進めており、今後スタッフに里親募集をする保護猫のお迎えや、ギャラリーでの譲渡会について進めていく予定です。ここが「垣根を越えたい」という大きな部分でもあります。
さらに、今後イベントなどでの売上の一部を保護猫活動へ寄付するなども考えています。まだオープン前でバタバタとしていますし、1歩ずつ、少しづつになるかもしれませんが、歩みを進めていく所存です。
2021年6月追記:保護団体や自らのレスキューでお預かりした保護猫の譲渡数は17匹となりました。また、お迎えをせずにマッチングという形でご縁をつないだ猫さんの数も同頭数に上ります。さらに2021年6月より、保護猫の譲渡会をスタートさせることとなりました。
=============
この回答が正解かどうかはわかりませんが、この回答コメントに対して、多くの「いいね」をいただけたことが、非常に嬉しく感じました。
上記のように、ペットを商売にするという(風に見える)ことに対し、賛否両論あるかと思います。
ただ、これに対しては私たち家族が最も悩み、考えた抜いた部分でもあります。だからこそ、単に「猫が可愛い!」と思ってもらうためだけの猫カフェではなく、あえてハードルを下げることで(珍しい猫に会える!など)、まずは猫と触れ合い、その中で保護猫のことを伝えていく。そこから保護猫カフェや保護団体への連携、場合によっては、ペットショップやブリーダーへの連携をしていける、ハブ的立ち位置となるコミュニティにしたいという想いに至りました。
【猫カフェを通じて何をしたいのか、
何を伝えたいのか、
そして、何を変えていきたいのか。】
この自らへの問いかけを、忘れることなく、邁進してまいりたいと思います。